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このコーナーは、京セラ株式会社が、永年にわたり構築された、経営に対する考え方(哲学)を抜粋して掲載させて頂きます。
特にその中心となっているのは、現在の名誉会長稲盛和夫氏であります。
稲盛和夫氏は、中小企業経営者にそのフィロソフィーを伝授すべく、「盛和塾」という勉強会も開いていらっしゃいます。
岡山では、「盛和塾岡山」があり、その事務局は岡山市内にあります。
このコーナーは少しずつ、掲載を増やしてゆきたいと考えています。
まず、最初に、京セラ経営の原点12ヶ条をご紹介致します。

(参考)このコーナーにつきましては、京セラ関係機関の同意を頂いています。

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京セラ 経営の原点12ヵ条
     
                
             1.事業の目的、意義を明確にする
                                 公明正大で大義名分のある高い目的を立てる。

                2.具体的な目標を立てる
                                 立てた目標は常に社員と共有する。

                3.強烈な願望を心に抱く  
                                 目標の達成のためには潜在意識に透徹するほどの強く持続した願望をもつこと。

                4.誰にも負けない努力をする
                                 地道な仕事を一歩一歩、堅実にたゆまぬ努力を。

                5.売上を最大限に、経費を最小限に
                                 入るを量って、出ずるを制する。利益を追うのではない。利益は後からついてくる。

                6.値決めは経営
                                 値決めはトップの仕事、お客様も喜び自分も儲かるポイントは一点である。

                7.経営は強い意志で決まる
                                 経営には岩をも穿つ強い意志が必要。

                8.燃える闘魂
                                 経営にはいかなる格闘技にもまさる激しい闘争心が必要。

                9.勇気を持って事に当たる
                                 卑怯な振る舞いがあってはならない。

                10.常に創造的な仕事を行う
                                 今日より明日、明日よりあさってと常に改良改善を絶え間なく続ける。
                              創意工夫を重ねる。

                11.思いやりの心で誠実に
                                 商いには相手がある。相手も含めてハッピーであること。皆が喜ぶこと。

               12.常に明るく前向きに、夢と希望を抱いて素直な心で 

                                                       京セラ 株式会社 名誉会長 盛和塾 塾長 稲盛和夫 
            
     
<『盛和塾』通巻60号 平成16年8月号より> 盛和塾 塾長 稲盛和夫 講演録
1.事業の目的、意義を明確にする
十二カ条の冒頭にあるのは、「事業の目的・意義を明確にする(公明正大で大義名分のある、高い目的を立てる)」です。
 京セラの場合には、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると、同時に人類・社会の進歩発展に貢献すること」という単純明快な
ものになっています。トップである私も含めて、末端の従業員に至るまで京セラという会社に集うすべての従業員を物質的にも精神
的にも幸せにしていたいがために、私は京セラという会社を経営するのです。他に目的はありません。会社の目的として、「この会
社に勤めてよかった。給料もヨソの会社より少し高いし、将来も安定していて安心して働ける」と思える会社にしてあげたいと思う
から、私は経営をしているのですということを経営の根幹に起きましたが、ぜひ皆さんもそのような会社の目的・意義を明確に打ち
立ててください。
  先ほどは低次元の自我に満ちたものと言いましたが、会社の目的とは、決して経営者の私利私欲に満ちたものではありません。
それをはっきりと従業員に伝える必要があります。
 「私は金儲けなどの自分自身の利己的な思いで、従業員を使って会社を経営しているのではありません。もちろん、私も幸せにな
りたいし、豊かになりたい。皆さんもそうでしょう。だから、一緒にこの会社を立派なものにしていき、お互いに物心両面で幸せに
なりましょう。そのために会社を経営するのです。だから、皆さんにも協力していただきたい。皆さん自身のためにも一生懸命に頑
張ってください。」
 そういうことをハッキリ言うのです。
 このような一緒に生活を守っていくのだという単純明快な大義名分でもかまいませんが、第二電電をつくりましたときは、これと
は少し異なるものでした。
  そもそも私自身が第二電電を始めた動機は次のようなものでした。
  「電気通信事業は電電公社が独占していた。そのため通信料金が高く、国民が困っている。競争がないから、そうなったのだ。
競争のない社会、独占された社会は決して消費者のためにならない。自由な競争を導入し、通信料金を下げていきたい。国民のため
に電電公社の独占体制に風穴をあけ、通信料金の低下を通じて、一般国民が喜んでくれるようにしたい」
 私はそういうことを思ったものの、実際に取りかかるまでには、「第二電電を興すこと私利私欲のためではないか」と自問自答を
続けました。皆さんにもよく話をしている「動機善なりや、私心なかりしか」という言葉で厳しく自分自身を問い詰め、「動機は善
だ、自分のためではなく国民のためにやるのだ、私利私欲に満ちた心ではなく、公明正大な心で第二電電を興そうとしているのだ」
と、自分自身で納得して事業を始めたのです。
 その第二電電は、つくった当初は寄せ集め部隊でした。競争相手の電電公社出身の技術陣もたくさんいましたし、商社から来た社
員、京セラから派遣した社員もいました。また一般公募で集まった社員もいました。寄せ集めの外人部隊のようなかたちで、第二電
電はスタートしたわけです。そういうまとまりの悪い外人部隊をまとめ、当初5兆円という巨大な売上を誇っていた電電公社に立ち
向かっていくわけですから、私は、第二電電の社員の人たちを次のように鼓舞しました。
 「第二電電は稲盛和夫の名誉欲やら私利私欲からつくったものではありません。国民のために安い通信料金の社会をつくりたいから、
この会社をつくったのです。社員の皆さんも、そういう第二電電をつくった目的に賛同してくれるなら、出身母体は何であれ結束し、
強大な電電公社に立ち向かっていこうではありませんか」
 「百年に一回あるかないかという激動、変革のときです。このような壮大な仕事に携わることができる、関係することができるチャ
ンスなど滅多にありません。その素晴らしい機会に恵まれた幸運に感謝し、団結して一緒に戦おうではありませんか」
  そういう檄を飛ばして、寄せ集め外人部隊を結集してきました。つまり十二ヶ条の一番目にある「公明正大で大義名分のある高い
目的を立てる」ということを通じて私は社会全体を引っ張っていたのです。
 この第二電電のような高邁(こうまい)な目的までいかなくても結構です。京セラの場合には、この会社に住んでいる人たちを幸せ
にしてあげたいという、単純でプリミティブなものでした。しかし、それは原始的なもののように見えますけれども、たいへん力強
い力を持っているのです。たとえば、働きの悪い従業員がいれば「私はあなたのために、この会社を必死に経営しているのだ。なの
に、なぜあなたはそんなに悠然としていられるのだ。君も一生懸命働いてくれ。私も会社のために、君のために、これだけ一生懸命
に働いているのではないか」と檄を飛ばすことができるわけです。
    
2.具体的な目標を立てる        
十二ヶ条の一番目で目的はハッキリしました。ですから、二番目は、今月はいくら売り上げて、いくら経費を使い、いくらの利益を
出すという、数字を使った目標を立てる。
  たとえば、今月は五千万円を売り上げて、三千五百万円の経費を使って一千五百万円の粗利をだす。そして販売費、一般管理費を
五百万円使い、一千万円ほどの利益を残そうという目標を立てます。そういうことを文言ではなく、月次の損益計算書で示していく
のです。売上を予想し、そこから仕入れ金額、全従業員の人件費、光熱費、交際費、そういうものを全部差し引き、いくらの利益を
出すのかという具体的な目標を立てるのです。
 そのようにして、今年の売上はいくらで、経費をどのくらい使って、どのくらい利益を出すのかという年間の目標を、損益計算書
のかたちにして具体的に立てていく。もし会社に損益計算書をつくれるようなスタッフもベテランの経理マンもいないというのなら、
決算書等を頼んでいる税理士さん、会計士さんに頼んでつくってもらえばよいと思います。
 会計士さんのところでは、結果としての損益計算書をつくって、期末になると皆さんに見せてくれているはずです。しかし、結果
だけではいけません。同時に予定もつくってもらうのです。たとえば会計士さんに「おたくは赤字が出ていますから、予定も赤字に
なります。売上がこのくらいであっても、経費はこれだけいるのですから」と言われるのなら、「それは困ります。売上をもう少し
あげ、経費は減らします。ですから、利益が出るような損益計算書をつくってください」とお願いをする。そうしてつくってもらっ
た予定の損益計算書を見ながら経営をすればよいのです。
 今まではそういうものを見ていなかったから赤字が出ていたわけです。売上は、損益計算書にある予定の売上をなんとか達成する。
経費もすべての項目にわたってなるべく使わないようにしていき、利益を残していく。そのような月々と年間の損益計算書の予定を
つくり、それを自分だけが持っているのではなく、コンパの席で従業員に見せながら話をしていきます。
 「皆さん、来月の売上はこれだけにしたいと思っている。そのために、営業のAさんには、これだけの売上をしてもらいたい。
Bさんには、これだけの売上をしてほしい。それには、あそことここの得意先を開拓してください」
 そのように、具体的に従業員に話をしていく。経費についても同じです。
  「この経費は、みんなで減らしていこう。電気代を使いすぎてはいませんか。この予定に書いてある、こういう費用も使いすぎて
はいませんか。これはもっと減らしましょう。細かく気をつけていけば、この項目の経費は減らせるはずです」
 そのように話をして、徹底的に経費を減らしていく作業に努めます。
 これが「具体的な目標を立てる」ということです。具体的な目標は、自分だけが持つのではありません。従業員にそれを見せて訴
えていかなければなりません。
 ですから企業経営には、徹底的な透明度がいるのです。京セラの場合には、昔から隠し事はありません。いくらの利益が出たのか
など、非常に透明度の高い状態で従業員に話をしてきました。ですから、従業員も会社の実情を隅から隅まで知っていて、みんなが
必死に協力しようという体制をとることができたわけです。
      
3.強烈な願望を心に抱く
  十二ヶ条の一番目にある目的と、二番目にある目標を立てたなら、そのことに対して三番目の「強烈な願望を心に抱く」が必要に
なります。目的と目標を願望として強烈に心に抱きます。それだけではなく、十二ヶ条のなかにある項目や、『心を高める、経営を
伸ばす』『敬天愛人』など皆さんが読んでいる本で、「なるほど、こういう考え方をしなければならないのか」と思われたことをす
べて強烈に心に抱くのです。
 それは潜在意識に透徹するほどの強く持続した願望でなければなりません。潜在意識に染み込んだ、つまり心の奥底にまで染み込
んで、自分はそれで動いているのだと実感できるほどでなければならないのです。私利私欲など、低次元の自我や感情・感覚で動い
ているのではない。心の中に信じ込んだもので動いているのだというものがいるわけです。
 そして、それを従業員に共有してもらう。従業員にそのように心から信じてもらえるようにしていく事こそが、真の社内教育なの
です。
            
4.誰にも負けない努力をする
  次は、四番目の「誰にも負けない努力」をみんなで実践していきます。
  今は、小規模な小売の商売で、地味な営業を続けており、こんなことをしていたのでは大した企業にはなれないと思っておられる
かもしれませんが、どんな偉大な事も、地味な一歩一歩の積み重ねによって成し遂げられたものです。今、自分がやっている一歩一
歩の地味な仕事を軽蔑するのではなく、塵も積もれば山となる。地味な商売も積み重ねれば、いずれ巨大な山になっていくはずだと
信じて誰にも負けない努力を継続していくのです。それが経営であり、そのような地道な努力を持続できないような忍耐力のない人
は、事業で成功することはできません。
 そういうことを自分自身に言い聞かせて、従業員にもぜひ協力してほしいと訴え続けていくのです。
      
5.売上を最大限に経費を最小限に
  五番目は、「売上を最大限に、経費を最小限に」です。これこそが経営の要諦です。
経営とは何も難しいことではありません。売上を少しでも増やし、経費を少しでも減らすことです。毎月やっている仕事で経費を
いかに使わずに、どうすれば売上を最大限に増やすかということを徹底して詰めていかなければなりません。そのような取り組み
を通じて、はじめて高収益の企業体質を実現することができるのです。
      
6.値決めは経営
  六番目は、「値決めは経営」です。値決めを間違えてしまえば、いくら頑張っても経営はうまくいきません。ですから、値決め
は経営であり、トップの仕事になります。
  四国はうどんが名産ですが、最近では具を何も入れないうどんは百円というのが相場になっているようです。あれを二百円で売
るのか、百二十円で売るのか、それとも百円で売るのか。それはそれぞれの経営者が決めることであり、それが経営を左右するこ
とになってくるわけです。
 たとえば、ヨソが百円で売っているならウチはそれより安くして、少しでも多く売って儲けようと思い、九十円という値段をつ
けた。しかし、材料代その他を入れてみたら、あまり利幅がなかった。それでは少しくらい多く売れて、商売が繁盛したようにみ
えても、実際には利益が残らない経営になります。
 また利益を得たいがために、みんなが百円で売っているところを百五十円の値段にした。しかし、そのためにあまり売れなくな
った。このように一杯の利幅は大きいように見えますが、結果的には経営がうまくいかないというケースもあります。
 値決めというのは、ことほど左様に難しいのです。同時に、それはトップの決めるものなのです。ヨソがこうだから、というも
のではありません。自分自身で材料代からすべてのものを計算し、そして一日何杯売ればいくらの粗利が出て、従業員を何人雇え
ばいくらの利益が出てくるのかという試算を詰めに詰めて、値段を決めていく。このように値決めは軽々しく決めるものではあり
ません。
      
7.経営は強い意志で決まる
  七番目は、「経営は強い意志で決まる」です。経営をしていれば、不況が押し寄せてきたり、不渡手形をつかまされたりと、
とんでもない目に遭います。そういう厳しい経営環境のなかでも会社を維持していくためには、経営者に強い意志力がなければな
りません。岩をも穿(うが)つ強い意志、自分の信じた道を必死に貫いていく、テコでも動かない強い意志、そういうものが、先行
き不透明な時代の経営に当たる経営者には不可欠です。
      
8.燃える闘魂
  八番目は、「燃える闘魂」です。経営者には凄まじいほどの戦う勇気、闘魂がいります。私が「経営はいかなる格闘技にも勝る
          激しい闘争心が必要だ」と言っていることを不思議に思うかもしれませんが、経営という修羅場で自分自身に打ち勝つ
          ためには、激しい闘志がいるのです。
      
9.勇気をもって事に当たる
  九番目は、「勇気をもって事に当たる」です。卑怯な振る舞いがあってはなりませんし、勇気のない者は経営者に不向きです。
どんなに怖じ気づくようなことが起ころうとも、勇気をもって事に当たる。女性であれ男性であれ、経営者ならばこれは一切変わ
りません。素晴らしい勇気、言葉を換えれば、「度胸」こそが、大勢の従業員の先頭に立つ経営者にはいるのです。
      
10.常に創造的な仕事を行う
  十番目は、「常に創造的な仕事を行う」です。つまり、日々創意工夫を重ねることです。今日よりは明日、明日よりは明後日
と、常に改良改善を絶え間なく続け、創意工夫を重ねていくのです。
  決して同じことを繰り返してやらない。同じようなことをやるのでも、そこに絶え間なく工夫を重ねていきます。そうすれば
やがて思わぬ進歩が得られます。それが経営なのです。
      
11.思いやりの心で誠実に
  十一番目は、「思いやりの心で誠実に」です。先ほど私は、経営者には激しい闘魂、強い意志、そして凄まじい度胸と勇気が
いるのだと言いました。そのような荒々しいものが必要だと言いましたが、そういうものを持った経営者の心の根底には、やさ
しい思いやりと誠実な心がなければなりません。荒々しい闘魂、勇気、度胸、強い意志だけではなく、心の根底には、やさしく、
美しい、思いやりに満ちた心、誠実で真面目な心が宿っていなければ、従業員を心酔せしめることはできません。
        
12.常に明るく前向きで、夢と希望を抱いて素直な心で経営する
  十二番目は、「常に明るく前向きで、夢と希望を抱いて素直な心で経営する」です。常に明るい心で前向きに、そして若者の
ような溢れる夢と希望を失わず、素直な心で経営をしていくのです。ひねくれて、戦略戦術と称して邪(よこしま)な心で、権謀
術策を立てていくのが経営ではありません。明るく前向きに、夢と希望を抱いて、素直な心で経営をしていくことが、必ずよい
結果を招きます。